第13章 ヒーロー仮免試験
「……っ、しまっ!」
崖上では、真堂が膝をついていた。
振動の個性を使い続けた反動で、身体に力が入らなくなっていたのだ。
彼は何とか立ち上がろうとしていたが、視界は揺れ、足元もおぼつかない。
そのとき、轟の炎が風に煽られ、真堂のいる方向へと流れてきた。
「なっ……!」
迫り来る炎。
逃げようにも、今の真堂には満足に身体を動かす力が残っていなかった。
周囲にいた受験生たちも、突然の事態に気づいていない。
「真堂君!」
緑谷が叫んだ。
考えるより先に、身体が動いていた。
「おもちさん、ギャングオルカを頼む!」
「緑谷君!?」
緑谷は個性を発動させ、真堂のいる崖上へと駆け出した。
地面を蹴り、瓦礫を飛び越え、炎が迫る中を突き進む。
そして、倒れ込んでいた真堂の身体を抱えるようにして掴み、間一髪で炎の進路から離脱した。
そのまま、十分に距離を取った安全な場所まで彼を運び、慎重に地面へと下ろす。
「大丈夫ですか!?」
緑谷は真堂の状態を確認する。
幸い、炎に巻き込まれることはなかったようだった。
だが、緑谷の顔には安堵だけではなく、強い怒りが浮かんでいた。
「何をしてんだよ!!!」
怒号が、試験会場に響き渡った。
その声は、轟にも夜嵐にも届いていた。
「二人とも、周りを見てよ! ここは喧嘩する場所じゃない! 僕たちは、助けを待っている人たちを守るためにここにいるんだろ!?」
緑谷の声が震える。
「自分たちの感情で、誰かを危険にさらしていいわけがないだろ!」
轟は言葉を失った。
炎を操っていた左手が、わずかに震える。
自分は何をしていたのか。
目の前の相手に父親の面影を重ね、感情を抑えきれなくなった。その結果、無関係な受験生を危険にさらしてしまった。
ヒーローを目指す者として、決して許されないことだった。
夜嵐もまた、唇を噛み締めていた。
自分の苛立ちが風を煽り、事態を悪化させた。その事実を否定することはできなかった。
しかし、今は反省している時間すらない。
目の前では、まだギャングオルカが動いているのだから。