第13章 ヒーロー仮免試験
対して、雄英高校の一年生であるA組は、まだ経験が浅い。
個性の扱いには自信があっても、救助の優先順位や人員配置、負傷者への声かけなど、学ぶべきことは山ほどあった。
「敵を倒すのとは、全然違うんだね……」
麗日が、搬送された負傷者を見送りながら呟く。
「そうね。力があるだけでは、十分ではないということですわ」
八百万も悔しそうに唇を引き結んだ。
誰も手を抜いているわけではない。
全員が一生懸命だった。
それでも、経験の差は確かに存在していた。
そんな彼らの様子を見て、おもちは一度、全員の顔を見渡した。
「みんな、ちょっと聞いて」
落ち着いた声に、A組の面々が振り返る。
「確かに、私たちはほかの受験生より経験が少ないかもしれない。判断に迷うこともあるし、思うように動けないこともあると思う」
彼女は、誰かを責めることなく、現状をそのまま受け止めた。
「でも、だからって焦らなくていいんだよ」
その表情には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
「救助って、全部を一人で解決することじゃないでしょう? 自分にできることを見つけて、周りと協力して、一人ずつ助けていくことが大切なんだと思う」
彼女は、先ほど救助した子どもの方へと目を向けた。
「まずは一つずつ。今の私たちにできることを、一生懸命やろう。それが、この試験の本質だよ」
その言葉に、緑谷がはっと顔を上げた。
彼女の言葉には、焦りも、見栄もなかった。
経験があるからといって、自分たちを見下すこともない。ただ、今できることに目を向けようと伝えている。
「……そうだよね」
緑谷は、ぎゅっと拳を握った。
「僕たちにできることを、一つずつ……!」
轟も彼女の言葉を受け止め、再び周囲の状況に目を向ける。
その様子を見たおもちは、満足そうに微笑んだ。
「うん。それじゃあ、次も頑張ろう」
彼女は再び現場を見渡した。
崩れた建物。散乱する瓦礫。助けを求める声。
そのすべてを冷静に受け止めながら、彼女は次に必要な行動を組み立てていく。
同じ一年生でありながら、悲惨な被害状況を前にしても揺るがない判断力。負傷者一人ひとりに向ける、驚くほど柔らかな眼差し。そして、仲間が自信を失いかけたときには、そっと背中を押す言葉をかける。