第13章 ヒーロー仮免試験
演者は、内心で評価をつける。
この試験では、救助対象者を演じる役者たちも、受験生の対応を減点方式で採点していた。
不用意な言葉や乱暴な行動、相手の不安を無視した対応があれば、その分だけ評価が下がる。
反対に、おもちの対応には、減点すべき要素がほとんど見当たらなかった。
「……うん。おじいちゃん、あっちにいるの……」
「教えてくれてありがとう。よく頑張ってお話ししてくれたね」
おもちは子どもの頭部を不用意に動かさないよう注意しながら、緑谷へと顔を向けた。
「緑谷君、この子は意識があって、今のところ呼吸も確認できている。でも、頭から出血しているから、軽傷だと決めつけないでね。救護担当に引き継いで、継続して状態を見てもらおう」
「う、うん!」
「それから、おじいさんの救助には別の人員を回したい。障子君、瓦礫の周囲を確認してもらえる? 崩落の危険と、ほかに取り残されている人がいないかを調べてほしいの」
「分かった」
「轟君には、先ほどお願いした安全確保を続けてもらって。救助に入る前に、周囲の危険を減らしたいから」
彼女の指示を受け、A組の面々が動き始める。
緑谷は子どもに付き添いながら、救護担当への連絡を行った。
その間にも、おもちは周囲を見渡し、次に何をすべきかを判断していく。
負傷者の数。負傷の程度。二次災害の危険性。救助に必要な人員。そして、搬送までの流れ。
彼女の視線は、目の前の一人だけにとどまらなかった。
目の前の命を守りながら、現場全体を見ている。
それは、公安で培われた経験そのものだった。
***
時間が経つにつれ、A組の面々も少しずつ気づき始めていた。
「……俺たち、思ったより全然できてないな」
瀬呂が、救助を終えた負傷者の搬送を手伝いながら呟いた。
周囲では、ほかの受験生たちが次々と救助活動を進めている。
彼らの中には、ヒーロー科の二年生や三年生も多く含まれていた。実践を意識した訓練を積んできた彼らは、負傷者の状態や周囲の危険を見極める判断にも慣れている。