第13章 ヒーロー仮免試験
『救助対象者への対応も、選考の評価に含まれます。救助技術だけでなく、状況判断、周囲への配慮、要救助者への接し方も評価対象です』
目良の淡々とした説明に、受験生たちの表情が引き締まる。
そして、彼らはまだ知らなかった。
この試験では、救助される側を演じる役者たちも、受験生の対応を評価しているということを。
負傷者の不安を和らげる声かけ。乱暴な扱いをしないこと。必要な情報を正確に伝えること。
人を助けるという行為の中にある、細かな部分まで見られているのだった。
***
試験開始の合図とともに、受験生たちが一斉に動き出した。
その中で、おもちは周囲の状況を見渡しながら、冷静に足を進めていた。
戦況を把握し、全体を俯瞰する。
どこに危険があるのか。どこに救助が必要なのか。どの負傷者を優先すべきか。そして、誰をどこに配置すれば、より多くの命を救えるのか。
彼女にとって、決して未知の状況ではなかった。
公安では、彼女は幾度となく事件現場の後処理や被害状況の把握、救助活動の後方支援に携わってきた。
現場の混乱が収束していく過程で、情報を整理し、優先順位を決め、必要な人員を適切に配置する。
それは、華々しく敵を倒すこととは違う。
しかし、救われる命の数を左右する、重要な仕事だった。
だからこそ、彼女はこの試験の本質を理解していた。
「……あそこ、二次災害の危険があるね」
崩れかけた建物の柱を見て、彼女は小さく呟いた。
「轟君、あの一帯の安全確保をお願い。まだ崩落する可能性があるから、救助に入る人たちが近づきすぎないようにしてほしいの」
「ああ、分かった」
「八百万さんは、搬送に使えそうな資材を確保して。障子君は、周囲の負傷者と危険箇所の確認をお願いできる?」
「承知しましたわ!」
「任せろ」
彼女の指示は簡潔だった。
それでいて、誰が何をすべきなのかが明確に伝わる。
緑谷を中心に集まっていたA組の面々も、それぞれの役割を理解して動き始めた。
一方で、爆豪、切島、上鳴の三人は、集団から離れて山岳ゾーンへと向かっていた。
「おい、こっちの方が瓦礫も多いぞ!」
「おう! 救助できる奴をどんどん助けようぜ!」
「お前ら、先走んなよ!」
三人は三人なりに、目の前の救助対象者を探しながら進んでいく。