第13章 ヒーロー仮免試験
轟は彼女の顔を覗き込むようにして、もう一度尋ねた。
「本当に大丈夫か。嫌なこと、されてねぇか?」
その言葉に、おもちは一瞬目を丸くした。
自分を庇うように前に立ってくれたこと。相手を威圧するだけでなく、自分の様子を何度も気にかけてくれること。
その何気ない優しさが、張り詰めていた心をゆっくりと解きほぐしていく。
「……ありがとう、轟君」
彼女は、ほっと息をつくと、轟に柔らかな笑顔を向けた。
先ほどまでの不安が嘘のような、安心しきった笑顔だった。
「もう、大丈夫」
「……そうか」
轟は小さく頷いた。
彼女の表情を見て、ようやく自分も安心したことに気づく。
守れた、という安堵。それ以上に、彼女がまたいつものように笑ってくれたことが、何よりも嬉しかった。
轟はほんの少しだけ目元を緩めると、彼女が安心してその場にいられるように、さりげなく隣へと立ち位置を変えた。
その様子を見ていた毛原は、内心でほっと胸を撫で下ろす。
一方、夜嵐はというと。
轟の隣で安心したように微笑むおもちを見つめ、複雑そうに眉を下げていた。
自分が彼女に向けたかった笑顔を、今は別の男が引き出している。
その事実が、思いのほか胸に引っかかっていた。