第13章 ヒーロー仮免試験
夜嵐と轟は、互いに一歩も引くことなく、鋭い視線をぶつけ合っていた。
「……おい。さっきから何なんだ、お前」
轟の声は低く、普段よりも明らかに険しい。対する夜嵐も、いつもの人懐っこい笑顔をどこかに置き忘れたように、轟を見据えている。
その背後では、おもちがそっと轟の服をつまみ、身を隠していた。
一触即発。
あと一言でも余計なことを口にすれば、二人が本当にぶつかり合いかねない。そんな張り詰めた空気が、その場を支配していた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
二人の間に割って入ったのは、士傑高校の毛原だった。
「夜嵐がまた失礼を働いたようで、本当に申し訳ない!」
毛原はそう言って、深々と頭を下げた。それから顔を上げると、後輩である夜嵐に厳しい視線を向ける。
「お前、相手が困ってるのが分からないのか。自分の気持ちばかり押しつけるな」
「……毛原先輩」
さすがに言い返せなかったのか、夜嵐は気まずそうに口をつぐんだ。
毛原は改めて轟たちに向き直り、申し訳なさそうに頭を下げる。
「本当にすみません。こいつ、悪気があるわけじゃないんですが、どうにも距離感が……」
「いや、別に」
轟は短く答えた。
毛原が夜嵐をきちんとたしなめてくれたことで、ひとまず事態は収まりそうだった。轟も、ようやく胸の内に張り詰めていたものを緩める。
そして、ふと背後を振り返った。
「……大丈夫か?」
そこには、まだ轟の後ろに身を寄せているおもちがいた。
先ほどまで強張っていた表情は、少しずつ和らいでいる。毛原が間に入ってくれたことで、ようやく安心できたのだろう。
それでも、まだ完全に緊張が解けたわけではないらしい。