第13章 ヒーロー仮免試験
「……あんたと、おもちさんは」
夜嵐の視線が、鋭くなる。
「どういう関係なんだ」
「……は?」
轟は、心底不思議そうな顔をした。
質問の意図が分からなかったのだろう。
「クラスメイトだ」
簡潔な返答。
しかし、夜嵐は納得しなかった。
「それだけか?」
「それ以外に何がある」
「……っ!」
あまりにも自然な答えだった。
轟には、彼女が自分の背中に隠れていることを、特別な意味として捉えている自覚がない。
轟は、彼女の方を振り返ることなく、半歩前へ出た。
彼女を背後に庇うように。
「大事な仲間に、ちょっかいかけてんじゃねぇよ」
低く、はっきりとした声だった。
その言葉に、彼女は思わず目を見開いた。
――大事な、仲間。
何気ない一言だったのだろう。
轟にとっては、A組の仲間を守るという、ごく自然な行動の延長にすぎない。
けれど、背中越しに伝わる彼の体温と、迷いなく自分を庇う姿が、彼女の胸をほんの少しだけ温かくした。
「……轟くん」
小さく名前を呼ぶ。
轟の耳が、わずかに赤くなった。
「……何だ」
「ありがとう」
「……別に」
短く返したものの、彼はその場を動かなかった。
彼女が安心して背後にいられるように。
そのことだけは、譲るつもりがなかった。
一方、夜嵐は二人を交互に見つめていた。
轟が彼女を庇っていること。
彼女が轟の背中に隠れていること。
そして、彼女が轟に向かって、柔らかく微笑んだこと。
その一つひとつが、妙に胸に引っかかった。
「……なるほど」
夜嵐は、拳をぎゅっと握りしめる。
「そういうことですか……!」
「いや、何も分かってねぇだろ」
轟が即座に突っ込んだ。
彼女は、二人のやり取りを見ながら、困ったように目を伏せる。
どうして、一次試験を終えたばかりの待機所で、こんな事態になっているのだろう。
ただ仲間たちを待ちながら、お菓子を食べていただけなのに。
しかも、助けを求めた相手が、よりによって夜嵐と因縁のある轟だったとは。