第13章 ヒーロー仮免試験
その勢いに、少し離れた場所で様子をうかがっていた男子生徒たちが、そろって目を見開いた。
「おい……あいつ、普通に話しかけてるぞ」
「しかも、あの距離感……!」
「すげえ。あんな美人を前にして、全然ひるんでねえ……!」
「俺たちなんて、まだ声をかけるかどうかで揉めてたのに……」
「くそっ、うらやましい!!」
先ほどまで、誰が彼女に話しかけるかで小競り合いをしていた一団である。
彼らの視線には、尊敬と羨望、そして隠しきれない嫉妬が入り混じっていた。
だが、当の夜嵐はそんな周囲の視線など、まったく気にしていなかった。
夜嵐は、おもちを見て、さらに嬉しそうに身を乗り出す。
「自分、体育祭であなたを拝見したときから、ずっとお話ししたいと思っていたんです!! 試験前は、緊張している皆さんの前でいきなり告白してしまい、失礼しました!! ですが、あれは本心であります!!」
「……本気だったのね」
「もちろんです!! 自分、嘘はつきません!!」
まっすぐだった。
あまりにも、まっすぐすぎた。
駆け引きも、探り合いも、遠回しな言い方もない。
自分の気持ちを隠すことなく、真正面から彼女にぶつけてくる。
公安での任務を通じて、相手の表情や声色から本音を読み取ることに慣れている彼女でさえ、夜嵐の言葉には裏を探す必要がなかった。
彼は、本当にそう思っているのだ。
それが分かるからこそ、彼女は少しだけ困ってしまった。
「ありがとう。そう言ってもらえるのは、嬉しいわ」
「おおお!! ありがとうございます!!」
「でも、今は試験の最中だから。まずは、お互いに仮免許を取得することを考えましょう?」
「はいっ!! もちろんであります!!」
返事だけは、実に立派だった。
ところが。
「では、試験が終わったら、ぜひ自分と食事に行っていただけませんか!!」
「……夜嵐くん?」
「もちろん、あなたのご都合を最優先にします!! お好きな食べ物は何でしょうか!? 自分、どんなお店でも全力で探します!!」
話がまったく止まらない。
しかも、会話を重ねるたびに、夜嵐は少しずつ彼女との距離を縮めていた。