第13章 ヒーロー仮免試験
「いや、だって! テレビで見たときも綺麗だと思ったけど、実物はもっと……」
「お前、話しかけてこいよ」
「えっ!? なんで俺なんだよ!」
「さっきからずっと見てんじゃねえか!」
「見てねえよ! いや、見てたけど!」
声を潜めているつもりなのだろうが、興奮しているせいか、会話は思った以上に周囲へ漏れていた。
話しかけろと背中を押された男子生徒は、顔を真っ赤にして仲間の腕をつかむ。
「む、無理だって! 何話せばいいんだよ! 試験お疲れさまです、とか!? いや、それも変だろ!」
「普通でいいだろ、普通で!」
「お前が行けよ!」
「俺はいい!」
「なんでだよ!」
小声の押し問答が繰り広げられる。
その様子を横目で見ていた別の候補生たちも、ひそひそと話し始めた。
「雄英って、あの子もいるのか……」
「一次試験、めちゃくちゃ早く通過してなかったか?」
「見たぞ。あの人数を一瞬で落としてた。個性、どうなってんだよ……」
「それなのに、あんなに落ち着いてるんだな」
美しさに目を奪われる者もいれば、先ほどの戦いぶりを思い出して警戒する者もいる。
興味と憧れ、そして畏怖。
さまざまな感情が入り混じった視線が、彼女に注がれていた。
しかし、当の本人はというと。
「……このサンドイッチ、美味しいわね」
小さく感想を漏らし、次にジュースへ手を伸ばしていた。
周囲の男子生徒たちが、彼女の一挙一動に一喜一憂しているなど、まるで気づいていない。
そもそも彼女にとって、今の最大の関心事は、クラスメイトたちが無事に一次試験を突破できるかどうかだった。
――緑谷くんたちは、どうしているかしら。
試験会場の方へ視線を向ける。
地形を大きく変えられた後、仲間たちと分断された。こちらは早々に合格できたものの、彼らの戦況までは把握できていない。
もちろん、A組の実力を疑ってはいなかった。
体育祭の頃とは違う。彼らは必殺技を身につけ、連携も磨いてきた。簡単に脱落するような仲間ではない。
それでも、試験である以上、何が起こるかは分からない。