第13章 ヒーロー仮免試験
一次試験を終えた候補生たちが、続々とこの場所へ集まってくる。
会場の一角に設けられた待機所には、テーブルがいくつも並び、その上には色とりどりのお菓子やジュース、サンドイッチや一口サイズの軽食など、簡単につまめるケータリングが用意されていた。
試験会場の緊張感とは打って変わって、どこかパーティー会場のような雰囲気すらある。
彼女は、その光景を興味深そうに眺めた。
そして、ふと考える。
――これ、公安の経費で落ちているのよね。
目の前に並ぶ軽食を一つ手に取り、しげしげと見つめる。
――プロヒーローの仮免試験ともなると、ずいぶん豪華になるのね。受験者の数を考えたら、相当な費用がかかっていそう
だけれど……。
職業柄、どうしても裏側の事情が気になってしまう。
試験の運営費、人員配置、会場設備、候補生たちへの安全対策。そして、この大量のケータリング。
普段なら何気なく見過ごすような光景も、公安の仕事を知る彼女にとっては、つい予算や運営体制の方へ思考が向いてしまうのだった。
そんな彼女の周囲では、別の意味で緊張が高まっていた。
「……なあ」
「なんだよ」
「あそこにいる人、雄英の……」
「ああ、体育祭に出てた子だろ?」
待機所へ入ってきた候補生たちの視線が、自然と一人の少女へ集まっていた。
長い髪が肩から背中へと流れ、鮮やかな青い瞳が伏せられている。整った顔立ちには落ち着いた大人びた雰囲気があり、座っているだけなのに、どこか人目を引く華やかさがあった。
そのうえ、身にまとっているヒーローコスチュームが、彼女の美しさをいっそう際立たせていた。
身体のラインにぴたりと沿う黒い衣装。動きやすさを追求したデザインでありながら、背中や脚の白い肌がのぞく大胆なつくりになっている。長い脚を組み替えるたび、すらりとしたシルエットが目に入った。
本人に見せつけるつもりなど、もちろんない。
彼女はただ、目の前のお菓子をどれにしようかと真剣に悩んでいるだけだった。
「やばい、めちゃくちゃ綺麗じゃね……?」
「声、でかいって!」