第13章 ヒーロー仮免試験
試験会場を、相澤は黙って見つめていた。
A組の生徒たちがそれぞれの場所で戦っている。
緑谷。
爆豪。
轟。
麗日。
切島。
すでにA組は、いくつもの小さなグループに分断されていた。
「……面白いね」
隣で見ていたジョークが、ふっと笑う。
「何が?」
「いや。雄英って、思った以上にバラバラに動いてるじゃない」
「そう見えるだけだ」
相澤は画面から目を離さない。
「……へぇ?」
「まだ本人たちは気づいてないだろうけどな」
一人の生徒がピンチになる。
すると、離れた場所にいた別の生徒が動く。
その動きを見た別の生徒も、自分の役割を変える。
一人ひとりが、自分の判断で動いている。
それでも――。
どこかで繋がっている。
ジョークが首を傾げた。
「イレイザー、もしかして心配してる?」
「違う」
即答だった。
「期待してるんだ」
「……期待?」
相澤は小さく息を吐く。
「A組には、妙な化学反応が起きてる」
緑谷出久。
爆豪勝己。
クラスの中心に立っているわけではない。
それどころか――。
二人の仲は、決して良いとは言えない。
互いに張り合い、衝突し、時には同じ場所にいるだけで空気が変わる。
それでも。
「緑谷と爆豪だ」
「……あの二人?」
「ああ」
相澤は淡々と続ける。
「本人たちは、自分たちがクラスに影響を与えてるなんて考えてないだろうけどな」
二人は、それぞれ別の場所で戦っている。
だが、その存在がA組の他の生徒たちを刺激している。
緑谷が一歩進めば。
爆豪も負けじと前へ出る。
爆豪が突き抜ければ。
緑谷もまた、自分のやり方を探して追いつこうとする。
その競争が、いつの間にかクラス全体へ波及している。
「二人が互いを意識してるからこそ、周りも引っ張られる」
ジョークが静かに頷く。
「……なるほどね」
「それだけじゃない」