第13章 ヒーロー仮免試験
最後の一人の標的にボールが当たると同時に、会場内に電子音が響き渡る。
――合格。
彼女の試験通過を知らせる音だった。
おもちは、浮かせていたボールを地面に落とす。
そして、乱れた髪を指先で整えた。
「これで、ひとまず終わりね」
まるで、少し面倒な用事を片づけただけのような口調だった。
彼女の視線が、遠くにそびえる岩壁へと向かう。
その向こうには、まだ戦っている仲間たちがいる。
緑谷くんたちは、無事かしら。
心配はあった。
だが、彼らならば大丈夫だろうという信頼もあった。
彼女は小さく微笑むと、会場の案内表示を確認し、通過者の待機場所へと歩き出した。
その一部始終を、崖の上から見ていた真堂は、しばらく言葉を失っていた。
「……嘘だろ」
彼は確かに、彼女を孤立させた。
そして、複数人で一斉に仕掛ければ、少なくとも動きを制限できると考えていた。
だが、結果はどうだ。
彼女は慌てるどころか、敵の攻撃を利用し、最小限の力で全員を脱落させた。
しかも、合格条件を満たすまでの動きに、ほとんど無駄がなかった。
「個性が強いだけじゃない……」
真堂は、彼女の消えていった方向を見つめる。
「判断力も、制御も、尋常じゃないぞ」
彼女は一人になったからこそ、その本領を発揮したのかもしれない。
A組の連携を崩せば、彼女も弱体化する。
その読みは、半分だけ正しかった。
彼女は確かに、仲間を支える指揮役だった。
だが同時に、一人でも戦況を支配できる実力者でもあったのだ。