第13章 ヒーロー仮免試験
最初の一人が投げたボールは、彼女の肩をかすめることすらなく、軌道を逸らされる。
二人目が距離を詰め、直接ボールを押し当てようとする。
その腕は、彼女の身体に届く寸前で、まるで見えない壁に阻まれたかのように動きを失った。
「なっ……!?」
さらに、背後から別の候補生が飛び込んでくる。
彼女は身体をわずかに傾けるだけで、その攻撃をかわした。
髪が、ふわりと揺れる。
どの攻撃も、届かない。
彼女の周囲を取り囲んでいた候補生たちの顔から、次第に余裕が消えていった。
「なんなんだよ、こいつ……!」
彼女はゆっくりと足を止めた。
そして、静かに振り返る。
青い瞳が、目の前の候補生たちを一人ずつ捉えた。
「私を狙ったこと、後悔するわよ」
その声音は、どこまでも穏やかだった。
だからこそ、余計に恐ろしい。
次の瞬間、彼女の足元に転がっていたボールが、ふわりと浮かび上がった。
「え……?」
候補生たちが反応するより早く、ボールは彼女の周囲を滑らかに旋回する。
彼女の個性が、ボールの動きに干渉していた。
ただ浮かせるだけではない。
速度、角度、軌道。
一つひとつを精密に制御し、狙った場所へと導いていく。
彼女は指先を、ほんのわずかに動かした。
「――行って」
ボールが、一斉に飛び出した。
狙いは、彼女を取り囲んでいた候補生たちの標的。
右へ逃げようとした者には、先回りする軌道で。
身を屈めた者には、低い角度から。
反射的に防御しようとした者には、その動きを読んだかのように、別のボールが回り込む。
「うわっ!」
「避けきれない……!」
次々と、標的にボールが命中していく。
正確無比。
無駄のない動き。
彼女は一度も、相手に触れていなかった。
それでも、彼女を狙った候補生たちは、あっという間に試験の脱落者となった。