第13章 ヒーロー仮免試験
目の前には土煙。
見えない、聞こえない。
誰がどこにいるのか分からない。
緑谷は周囲を見渡す。
「みんな、どこ!?」
返事がない。
その頃。
彼女もまた、一人だった。
さっきまで周囲にいた受験生たちも、揺れによって散っている。
「……」
彼女は立ち上がる。
服についた砂を払う。
そして、遠くを見る。
雄英の仲間たちの姿はない。
「……分断された」
真堂の読みは、間違っていなかった。
少なくとも、普通の候補生を相手にするならば。
だが。
おもちは、慌てる様子もなかった。
ゆっくりと周囲を見渡すと、崩れた岩の位置、足場の傾斜、敵の配置を確認する。
それから、小さく息を吐いた。
「……なるほど。地形操作に近い規模の振動。面白い個性ね」
感心したような声音だった。
孤立させられたことへの焦りはない。
彼女は自分の手を見下ろし、個性の出力を調整する。
広範囲を支配する必要はない。
今必要なのは、自分の身を守り、敵の攻撃を受け流し、確実に合格条件を満たすこと。
それだけだ。
「不可侵領域」
静かな声とともに、彼女の周囲に見えない境界が展開された。
自身を中心とした、最適化された防御領域。
必要以上に広げず、無駄な力も使わない。攻撃が届く瞬間だけを見極め、あらゆる干渉を最小限の動きで制御する。
彼女は一度、崩れた岩を軽やかに避けた。
そして、何事もなかったかのように歩き始める。
まるで、戦場を散歩しているかのような優雅さだった。
その姿を見ていた他校の生徒たちは、戸惑いを隠せなかった。
「おい……あいつ、一人になったぞ?」
「雄英の連中と離れたんだ。今ならいけるんじゃないか?」
「個性が厄介なのは分かってる。でも、あの防御を突破できなくても、数で押せば……!」
五人、六人と候補生たちが集まり始める。
彼らは互いに目配せを交わし、一斉に彼女へと駆け出した。
「囲め!」
「ボールを当てろ!」
左右から、そして正面から。
複数の候補生たちが、ボールを構えて襲いかかる。
だが、彼女は逃げなかった。