第13章 ヒーロー仮免試験
「えっ……!?」
相手側の候補生たちが、動揺の声を上げる。
その一瞬の隙を、彼女は見逃さなかった。
「緑谷くん、右側の二人。攻撃の動作が大きいわ。次に投げる瞬間を狙って」
「分かった!」
「飯田くん、左の斜面を使って移動して。麗日さん、足元に注意してね」
「うん!」
仲間たちが一斉に動き出す。
彼女自身もまた、無駄のない足取りで位置を変えた。
圧倒的な力を見せつけるのではなく、仲間が力を発揮できる状況を整える。
その姿は、まるで戦場全体を一つの盤面として捉えているかのようだった。
崖の上から、再び敵意に満ちた声が響く。
「怯むな! あいつ一人の個性を警戒してどうする!」
彼らはまだ知らない。
目の前にいる美しい少女が、どれほどの力を秘めているのか。
そして彼女自身が、その力をどこまで使うべきか、冷静に見極めていることも。
緑谷たちは、もはやただ狙われるだけの集団ではなかった。
仲間の個性を理解し、互いの動きを補い合いながら、反撃の機会を窺う。
試験開始から、わずか数十秒。
雄英を狙うライバルたちと、彼らを迎え撃つ雄英の生徒たち。
その攻防の中心で、おもちは青い瞳を細めた。
***
試験会場のドーム席には、相澤とMrsジョークの姿があった。
「お前が、除籍にしていないなんて、よっぽど今年のクラスを気に入ってるんだな」
初めに口火を切ったのはMs.ジョークだった。
彼女が笑いながら声を飛ばす。
「…おいおい、まさかあの子たちに例の事、伝えてないのか?」
「毎年のことだろ」
「だったら最初に生徒たちに教えてあげればいいじゃない」
「教えたところで、やることは結局同じだ」
「そうだけどさぁ!体育祭でもう個性を知られてるから、真っ先にやられる”雄英潰し”。可愛い生徒なら、教えてやればいいのに…」
Ms.ジョークが笑う。
相澤は目を細めた。
「うちは少し先を見据えてる」
「……へえ?」
「想定外に対応できるかどうかを見るには、事前に教えない方がいい。それに、個性バレなんて、ヒーローにはつきものだ。当然相手も対策をしてくる。うちは、一歩先を行ってるんだ。」
そう言い切る相澤は、再び会場に目を向けた。その目には期待と、少しの焦りがあった。
(絶対に通過しろよ。有精卵ども…!)