第13章 ヒーロー仮免試験
緑谷たちが足を止める。
見上げた先には、崖の縁にずらりと並んだ他校の候補生たちがいた。
一人や二人ではない。
十人、いや、それ以上。
彼らは崖の上から雄英の一団を見下ろし、獲物を見つけたかのように闘争心を剥き出しにしていた。
「やっぱり……!」
緑谷の顔が強張る。
予想していたこととはいえ、実際にこうして集団で囲まれると状況は厳しい。
上方から一斉に攻撃されれば、避けるだけでも精一杯になる。しかも、相手が狙っているのは明らかに雄英の生徒たちだ。
「うそ……! こんなにたくさん!?」
麗日が息を呑む。
「落ち着こう! 相手の数に惑わされてはいけない!」
飯田が声を張り上げるものの、その視線は崖の上を忙しなく行き来していた。
相手の個性は分からない。攻撃の射程も、連携の仕方も不明。
先手を取られれば、試験開始直後に脱落する可能性すらある。
だが、そんな緊迫した状況の中で、おもちは妙に静かだった。
彼女は周囲を一瞥し、敵の人数、配置、地形、そしてこちらの退路を瞬時に確認していた。
崖上にいる候補生たちのうち、前列は攻撃態勢。後列には、すでにボールを構えている者もいる。
彼らは雄英の知名度を利用し、最初の標的として集中的に狙うつもりなのだろう。
合理的ではある。
しかし、合理的だからこそ、付け入る隙もある。
「……なるほど。知名度を逆手に取られたわけね」
彼女は落ち着いた声で呟いた。
「おもちさん……?」
緑谷が振り向く。
彼女は彼の視線を受け止めると、口元に薄く笑みを浮かべた。
「緑谷くんの予想は正しかったわ。私たちは、最初から狙われることを前提に動くべきだった。」
責めるような口調ではない。
むしろ、その判断を肯定する声音だった。
「でも、まだ試験が始まったばかり。向こうが数で押してくるなら、こちらは連携と判断力で対抗しましょう」
彼女の瞳が、崖上の候補生たちを捉える。
青い瞳の奥に浮かんでいたのは、恐怖でも焦りでもなかった。
相手が何を考え、どう動き、どこを狙ってくるのか。
そのすべてを見極めようとする、冷静な観察者の眼差しだった。