第13章 ヒーロー仮免試験
試験会場に設けられた更衣室でヒーローコスチュームに着替えたA組の生徒たちは、指定された集合場所へと向かっていた。
周囲には、全国各地から集まったヒーロー科の生徒たちがひしめいている。色鮮やかなコスチューム、個性の強そうな風貌、そして試験を前にした緊張感。それぞれが自分の実力を示そうと、静かに闘志を燃やしていた。
彼女もまた、改良された漆黒のコスチュームに身を包んでいた。
身体のラインに沿った黒い装備に、左右で長さの異なるスカート。
背中は大胆に開かれ、長い巻き髪がその上を流れている。片脚を覆うブーツと、反対側の太腿に設けられたホルスター。
以前よりも機能性を増した装備は、彼女のしなやかな動きを妨げることなく、むしろその存在感を際立たせていた。
「……すごい人数だね」
緑谷が周囲を見渡しながら呟く。
「ぶっ潰す」
爆豪は不敵に笑った。
「気を抜くなよ。試験の内容によっては、個性の相性もある」
轟が冷静に指摘する。
「分かっとるわ!!!」
そんな会話を聞きながら、彼女は会場の前方へ目を向けた。
壇上には、マイクを手にした男性が立っていた。
公安委員会の目良善見。
その姿を認めた瞬間、彼女は思わず瞬きをした。
目の下には濃い隈。肩は落ち、目は半分ほど閉じられている。
マイクを持つ手にさえ、どこか力が入っていない。
立っているというより、かろうじて人の形を保っているように見えた。
――……目良さん。
彼女は心の中で、そっと合掌した。
――お疲れさまです。
公安委員会の業務がどれほど過酷か、彼女は身をもって知っている。
折しも、ヒーロー社会の情勢は不安定さを増していた。各地での事件対応、ヴィランの動向分析、関係機関との調整。現場のヒーローだけでなく、裏方の職員たちも休む間もなく働いている。
そんな多忙を極める時期に、仮免許試験の責任者まで任されるとは。