第13章 ヒーロー仮免試験
彼らは本気で、この試験に挑もうとしている。
自分のように、別の目的を抱えているわけではない。
ヒーローになりたい。
誰かを救いたい。
その願いのために、ここまで来たのだ。
――少しだけ、羨ましいわね。
彼女は目を細めた。
そして、クラスメイトたちとともに拳を掲げる。
「せーの!」
『プルスウルトラ!!』
その声が、試験会場の空気を震わせた。
――その直後だった。
『プルスウルトラァァァァァ!!』
「……え?」
聞き覚えのない、やけに熱量の高い声が重なった。
A組の全員が振り返る。
そこには、士傑高校の制服を着た長身の少年が立っていた。
ヒーロー科において、誰もが知る名門校。
いわば――
東の雄英。
しかし、その雄英と並び称される学校がある。
西の士傑高校。
全国屈指の難関校の生徒が、A組に乱入してきた。
大きな目に、燃えるような情熱。全身から溢れ出す活力は、遠目からでも伝わってくる。
「いやぁああ! 素晴らしいっすね、雄英高校! その心意気! その団結力! 自分も混ぜていただきました!!」
少年は満面の笑みで拳を突き上げた。
あまりの勢いに、A組の面々は一瞬、言葉を失う。
「……誰?」
芦戸が小声で呟いた。
「士傑高校の生徒だな」
相澤が面倒くさそうに答える。
「夜嵐イナサ。推薦入試では、雄英の合格者の中でもトップクラスの成績だった」
「えっ!?」
緑谷が驚いて振り返る。
「雄英の推薦入試で!?」
「ああ。だが、入学を辞退して士傑に進学した」
「トップの成績だったのに、雄英を蹴ったってことか?」
切島が目を丸くする。
相澤は腕を組んだまま、夜嵐を見た。
「理由は知らん。実力は確かだ。少なくとも、轟と比較しても遜色ない」
「……!」
その言葉に、A組の空気が変わった。
轟は無言で夜嵐を見つめている。
緑谷は早くも分析を始めたらしく、視線が忙しなく動いていた。