第13章 ヒーロー仮免試験
バスがゆっくりと速度を落とし、やがて大きな試験会場の前で停車した。
窓の向こうには、全国から集まったヒーロー科の生徒たち。
見慣れない制服、鍛え上げられた身体、そして、それぞれの思惑を秘めた鋭い眼差し。
今日、この場所にいるのは、未来のプロヒーローを目指す者たちだ。
「……着いたな」
轟の呟きを合図にするように、クラスメイトたちが一斉に立ち上がった。
バスの扉が開く。
最初に降りた相澤に続き、A組の生徒たちが会場へと足を踏み出した。
広大な敷地。いくつもの学校から集まった受験者たち。遠くから聞こえる声や足音が、試験の規模の大きさを物語っている。
「うわ……すっげえ人数」
上鳴が思わず声を漏らした。
「他校のヒーロー科って、こんなにいるんだな……」
切島も周囲を見渡す。
普段は自信に満ちている生徒たちも、さすがに今日ばかりは緊張を隠せないようだった。
峰田は青ざめた顔で、相澤の服の裾をつまんだ。
「せ、先生……俺たち、本当に仮免取れるのかな……」
小さな声には、切実な不安が滲んでいた。
相澤はそんな峰田を一瞥する。
「取れるかな、じゃねぇ」
低く、よく通る声だった。
「必ず取ってこい」
「……!」
「お前らは、そのために訓練を積んできた。ここで自分の実力を疑ってどうする。今までやってきたことを、全部ぶつけてこい」
飾り気のない言葉。
けれど、それは彼らが積み重ねてきた日々を誰よりも見てきた教師の言葉だった。
緊張で強張っていた生徒たちの表情が、少しずつ変わっていく。
「……そうだよな」
切島が拳を握った。
「ここまで来たんだ。やるしかねえ!」
「うん。僕たちなら、きっと大丈夫だ」
緑谷も頷く。
飯田は眼鏡を押し上げ、背筋を伸ばした。
「全員、気を引き締めて臨もう! 我々は雄英高校ヒーロー科の生徒だ!」
「おーっ! やってやるぜ!」
上鳴の声に、クラスメイトたちが笑う。
彼女もまた、その輪の中で静かに微笑んでいた。
仮免許試験。
公安からすれば、これもまた任務の一環にすぎない。
それでも今、自分の隣で拳を握る仲間たちを見ていると、胸の奥に小さな熱が灯るのを感じた。