第3章 USJ襲撃事件編
黒霧へ。
「……!」
黒霧が彼女に気づいた。
「私を狙っているのですか」
「ええ」
彼女は銃を向ける。
「あなたが逃げ道だから」
黒霧の身体が広がる。
「させません」
空間が歪む。
その瞬間、彼女は銃を下ろした。
「……?」
黒霧が止まる。
「撃たない?」
「撃つ必要がないもの」
彼女の視線が、黒霧の足元へ落ちる。
そこには、さっき彼女が撃ち込んだ弾丸が転がっていた。
「……まさか」
黒霧が気づく。
遅い。
弾丸には、すでに彼女の個性が宿っている。
彼女が指を鳴らした。
「――捕まえて」
弾丸が跳ねる。
床を走り、黒霧の身体へ触れる。
一瞬、黒い霧の動きが止まった。
「……!」
彼女は笑った。
黒霧の霧が乱れる。
「あなたたちは、私が銃を撃っていると思ってる」
一歩、
「でも」
もう一歩
「撃ってるのは、銃じゃない」
彼女が拳銃をくるりと回す。
「戦場そのものよ」
相澤が目を細める。
死柄木が舌打ちする。
そして緑谷たちは、ただ呆然と彼女を見ていた。
彼女はもう、誰かに指示される存在ではなかった。
公安の命令に従うためでもない。
任務を完遂するためでもない。
誰かを守るべきだと計算したからでもない。
ただ、自分がそうしたいから、目の前にいる仲間を守りたいから、戦いたいから、彼女は戦っていた。
「……私」
彼女が小さく呟く。
頬の血を指で拭う。
そして、初めて見るような、無邪気な笑顔を浮かべた。
「こんなに自由に戦えるんだ」
その瞬間、死柄木が彼女へ向かって走り出す。
「だったら――」
彼女も走る。
「もっと自由にやってみようか」
銃声が、USJに響き渡った。