第3章 USJ襲撃事件編
「チッ!」
死柄木が腕で顔を庇う。
その隙に、彼女は走った。
床
壁
手すり
瓦礫
そこに存在するすべてを、彼女は一瞬で「武器」に変えていく。
銃声が響くたび、一つ、また一つ、戦場が彼女の手の中へ変わっていく。
「……すごい」
緑谷が呟いた。
今まで見ていた彼女とは、まるで違う。
いつもなら、彼女は安全な場所から全体を見ていた。
誰がどこにいるのか
敵が何をするのか
次に何が起きるのか
すべてを予測していた
けれど今は、
「笑ってる……?」
麗日が呟く。
そう、彼女は笑っていた。
楽しそうに、心から、戦うことそのものを楽しんでいるような顔。
「……あんな顔、するんだ」
相澤もそれに気づいていた。
「……初めて見たな」
彼女自身も気づいていない。
自分が笑っていることに。
ただ、身体が軽かった。
頭で考えるより先に、身体が動く。
次に何をすればいいか。
どこへ行けばいいか。
何を使えばいいか。
全部、分かる。
「これ……」
彼女は一瞬、目を見開いた。
そして笑った。
「楽しい…!」
その言葉を聞いた死柄木の顔が歪む。
「……ふざけんな!」
死柄木が一気に距離を詰める。
速い。
彼女は避ける。
手が頬を掠める。
「……!」
頬に薄い傷が入った。
血が一筋
それでも、彼女は止まらない。
死柄木がもう一度手を伸ばす。
彼女はその腕を掴まない。
近づきもしない。
ただ、身体を滑らせるように横へ抜ける。
そして、
パァン!!
至近距離で弾丸が死柄木の肩を掠める。
「ぐっ!」
「惜しい。次は当てるから!!」
彼女が呟く。
「てめぇ……!」
死柄木が振り返った瞬間。
彼女はもう走っていた。
敵へではない。