第13章 ヒーロー仮免試験
A組を乗せたバスは高速道路を走っている。
轟の肩には、彼女が静かに寄りかかっていた。
本人は完全に眠っている。
轟は特に気にする様子もなく、窓の外を眺めていた。
その光景を、斜め後ろからじっと見ていた上鳴がいた。
「…………」
ちらっ。
「…………」
ちらっ。
そして、とうとう我慢できなくなった。
「なあ、轟」
「何だ」
「俺と席、替わってくんない?」
轟が振り返る。
「……なんでだ?」
あまりにも純粋な疑問だった。
上鳴は一瞬言葉に詰まる。
「いや……」
轟は首を傾げる。
「俺は、別に席を替わる必要ないと思うが」
「いやいやいや!」
上鳴が小声で身を乗り出す。
「だってさ!」
指を差す。
「轟ばっかりずるいじゃんか!」
「……?」
轟は自分の肩を見る。
そこにはおもちが、すやすやと眠っている。
そして、もう一度上鳴を見る。
「何がだ?」
「何がって……!」
上鳴は頭を抱える。
「その席!」
「席?」
「そう! その席!」
「……」
轟はしばらく考えた。
そして、真顔で答える。
「席は名簿順だろう」
「そういうことじゃねぇよ!!」
上鳴の声が少し大きくなった。
「静かにしろ」
轟が言う。
「起きる」
「……はい」
上鳴が口を押さえる。
隣で聞いていた耳郎が、呆れたように口を開いた。
「上鳴」
「何?」
「……やましいやつ」
「なんで!?」
「だって、替わりたい理由が『轟ばっかりずるい』なんでしょ?」
「いや、それは……!」
「何がずるいの?」
「…………」
上鳴が黙る。
耳郎がじっと見る。
「ほら図星じゃんかww」
「いや違うって!」
「じゃあ何?」
「…………」
「言ってみ?」
「……羨ましいだけです」
「やっぱり」
耳郎が即答する。
「お前、ほんっと分かりやすいな」
「だって!」