第13章 ヒーロー仮免試験
その会話の間にも、彼女はすやすやと眠っている。
緑谷は少し離れた席からその様子を見ていた。
そして――
ノートを取り出しかける。
「……」
爆豪が即座に気づいた。
「デク」
「!」
「書くなよ」
「まだ何もしてないよ!?」
「どうせ『半分野郎の判断について』とか書くつもりだろ」
「そ、そんなこと……」
「顔に出てんだよ」
「……」
緑谷はノートをそっと閉じた。
その様子を見ていた耳郎が吹き出す。
「もう、あの二人が並ぶと毎回こうなるじゃん」
「本人たちは何も気にしてないんだもんな」
上鳴が笑う。
「むしろ轟、普通に『危ないから支えた』って顔してるし」
「それが余計に面白いんだよ」
耳郎が呆れたように言った。
やがてバスが大きく揺れる。
轟の腕に少し力が入る。
彼女はそれでも起きない。
「……ん」
小さく身じろぎしただけ。
轟は何も言わず、再び窓の外を見る。
その横で。
A組の何人かが、同じことを思っていた。
――この二人、またか。
そして試験会場が近づくにつれ、車内の空気も徐々に引き締まっていく。
ライバル校。
上級生。
一年生で仮免を取得することの難しさ。
誰もが、それぞれの不安を抱えていた。
そんな中で、彼女だけは、まだ轟の肩に寄りかかったまま眠っていた。
「……あと五分くらいで着くな」
轟が呟く。
耳郎がその声に反応する。
「寝顔もうちょい見ときたいしさ、もうちょっと寝かせてあげたら?」
「そうか」
轟は頷いた。
爆豪が前を向き直る。
「……ったく」
その声には、呆れと――ほんの少しの笑いが混じっていた。