第13章 ヒーロー仮免試験
仮免許試験当日。
雄英高校のバスが、試験会場へ向かって走っていた。
車内には、いつもとは少し違う緊張感が漂っている。
「しかし、まさか会場が別々になるとはな」
切島が前方を見ながら言った。
「同じ学校の生徒同士で潰し合うのを避けるため、だそうだ」
飯田が眼鏡を押し上げる。
「つまり、雄英の生徒同士で直接競い合うことはないわけか」
「でもさ」
上鳴が身を乗り出す。
「雄英以外にもヒーロー科っていっぱいあるんだよな?」
「ああ」
相澤が前方の座席から答えた。
「それに参加者は一年だけじゃない」
「え?」
緑谷が顔を上げる。
「二年、三年の生徒も?」
「いる」
相澤は淡々と続ける。
「そもそも一年生で仮免を取ること自体、珍しい。高校のヒーロー科に入ってすぐ、仮免まで進む生徒は少数派だ」
その言葉に。
緑谷の表情が変わった。
「……少数派」
ノートを開く。
「つまり、僕たちは……」
「周りが一年生だけとは限らないってことだな」
轟が窓の外を見ながら言う。
爆豪が鼻を鳴らす。
「だったら全員ぶっ潰しゃいいだろ」
「いや、そういう試験じゃないと思うよ!?」
緑谷が慌てる。
そのやり取りを、少し離れた席から彼女は聞いていた。
――目立ちたくない。
率直に言えば、それが彼女の本音だった。
今回の試験も、本来なら自分が積極的に参加することに少し引っかかりがあった。
自分は雄英に来た目的が、純粋なヒーロー志望だけではない。
潜入のため。
情報を得るため。
だからこそ、
「……私が仮免を取っていいのかな」
小さく呟く。
隣に座っていた轟が振り向いた。
「何か言ったか?」
「ううん」
彼女は首を横に振る。
少し前。
その疑問を上に投げたことがある。
――仮免試験まで受ける必要があるのか。
返ってきた答えは、簡潔だった。
『これも捜査のうちだ』
それだけだった。言われたことに従うのみと思っていたが、何となく嫌な予感がしてしまう。どこか裏があるような気がしてならない。
彼女は小さく息を吐いた。
「やるしかないか」