第12章 編め、必殺技!
「……チッ」
爆豪は舌打ちした。
胸の奥にわずかに残っていた緊張が、ようやくほどけていく。
あの構え方を見たとき、彼は一瞬、本当に危険なものを彼女が持ち歩いているのではないかと思ったのだ。
だが、フェイクだというなら話は別だ。
……いや、別なのか?
爆豪は、彼女のスカートに視線を落とした。
ホルスターに収まった拳銃。
そして、脳裏に蘇るのはUSJでの一件だった。
あのときも、彼女は銃を扱っていた。
ただし、あれは彼女の個性をまとわせるための道具だったのではないか。
そう考えれば、今回の拳銃も、威圧や牽制を目的とした装備なのかもしれない。
「……なるほどな」
爆豪は小さく呟いた。
もちろん、彼女が公安の人間として本物の銃を扱ってきた経験があることなど、知る由もない。
彼女が見せたのは、真実の一部分だけ。
そして、その一部分さえ、半分は嘘で塗り固められていた。
フェイクの拳銃。
フェイクの理由。
そして、冗談めかした笑顔の奥に隠された、本当の経歴。
真実を知る者は、まだいない。
「ねえ、ちょっと! 私にも見せてよ、そのおもちゃ!」
芦戸が興味津々で身を乗り出す。
「駄目よ。危ないから」
「えっ!? 弾出ないんでしょ!?」
「扱いを間違えれば、思わぬ事故につながるでしょう?」
「正論! めっちゃ正論だけど、さっき物間には向けてたじゃん!」
「彼は自分から見たがっていたもの」
「そういう問題じゃないって!」
教室に笑い声が広がった。
その中心で、彼女は何食わぬ顔でページをめくっている。
爆豪はその横顔を見つめ、やがて小さく息を吐いた。
「……食えねえ女」
そう呟いた声は、誰にも届かなかった。
彼女が本当に何者なのか。
なぜ、あれほど自然に銃を扱えるのか。
そして、どうして時折、年齢にそぐわない冷たい目をするのか。
疑問は増えるばかりだった。