第12章 編め、必殺技!
その笑顔が、物間にはひどく恐ろしく見えた。
緑谷は息を呑む。
体育祭や訓練で見る彼女の戦闘時とも、少し違う。
これは、相手を圧倒するための演技だ。
いや、演技だと分かっていても、背筋が冷えるほどの迫力があった。
彼女は拳銃を確認するように操作し、ゆっくりと物間へ向けた。
「ま、待て! 話せば分かる! 僕はただ、学校の規則について――」
「そうね。規則は大切だわ」
彼女は静かに頷く。
「だから、今からあなたに大切なことを教えてあげる」
「な、何を……?」
「人の大切なものを侮辱するときは、相手をよく見てからにすることよ」
彼女の指が、引き金にかかった。
物間が固まる。
周囲の生徒たちも、思わず息を止めた。
爆豪の目が鋭く細められる。
緑谷は、いつでも彼女を止められるようにと身構えた。
そして――。
カチッ。
引き金が引かれた。
当然、銃弾は出なかった。
静寂が落ちた。
彼女は銃を構えたまま、物間を見つめる。
そして、満面の笑みで告げた。
「バーン♡」
「うわああああああああああああっ!?」
物間の絶叫が、教室を突き抜けた。
「死んだああああああああああああっ!!」
「いや、生きてるよ!?」
緑谷が思わず突っ込んだ。
「撃たれた! 僕は撃たれたぞ!?」
「撃たれてないって!」
「心臓が止まった! 今、確実に止まった!」
「止まってたら喋れねえだろうが!」
爆豪の怒声が飛ぶ。
しかし物間は聞いていなかった。
顔面蒼白のまま、机の角に足を引っかけ、椅子にぶつかり、直後には自分の足で自分の足を踏んで転びかけた。
「ひ、卑怯だぞ! こんなものを持ち歩くなんて! 君は一体、どこでそんな技術を――!」
「あなたが聞いたのでしょう?」
「聞いたけど! 撃つとは聞いてない!」
「撃っていないわ」
「そういう問題じゃないんだよぉぉぉ!!」
彼女は、そんな物間をじっと見つめていた。
その瞳に浮かんでいるのは、先ほどまでの冷たい殺気ではない。
新しいおもちゃを見つけた子どものような、純粋な好奇心だった。
「……ふふ」
彼女の肩が、小さく揺れる。