第3章 USJ襲撃事件編
黒い霧が広がる。
「――来る!」
彼女の声と同時に、黒霧の身体が大きく膨らんだ。
空間が歪む。
逃げ道を作るつもりだ。
「させるか!」
相澤が踏み込む。
しかし、死柄木がその前へ出た。
「邪魔すんなよ、先生」
伸ばされた手。
相澤が身を引く。
その瞬間――
パァン!!
銃声が響いた。
死柄木の手のすぐ横を弾丸が掠める。
「……!」
死柄木が振り返る。
彼女はもう、さっきまでいた場所にはいなかった。
「どこ――」
「こっち」
背後から声がして、死柄木が振り向く。
彼女がいた。
拳銃を片手に持ち、もう片方の手には何もない。
「……!」
死柄木が手を伸ばす。
彼女は一歩下がる。
触れさせない。
一歩、さらに一歩と死柄木が追う。
「逃げてんじゃねぇよ!」
「逃げてる?」
彼女が笑った。
ほんの少し。
「違うわ」
身体をひねる。
死柄木の手が空を切る。
そのまま彼女は床を蹴った。
「誘導してるの」
死柄木の足元へ――
パァン!
弾丸が床へ撃ち込まれた。
「……?」
死柄木が目を落とす。
その瞬間、床に転がっていた金属片が、勢いよく跳ね上がった。
彼女の個性が宿っている。
金属片が宙を舞い、死柄木の腕へ絡みついた。
「なっ……!」
「一つ」
彼女が指を立てる。
金属片がさらに伸びる。
「二つ」
周囲に散らばっていた破片が、一斉に動き始める。
「三つ」
まるで意思を持ったように、彼女の周囲を舞う。
「……何だよ、これ」
死柄木が腕を振る。
金属片が吹き飛ぶ。
だが、彼女はもうそこにいない。
「遅い」
声が上から聞こえた。
死柄木が顔を上げる。
彼女は、崩れた瓦礫の上に立っていた。
長い髪が風に揺れ、拳銃を肩の高さまで上げる。
「戦場っていうのはね」
引き金に指をかける。
「立ってる場所まで、武器になるの」
パァン!!
弾丸が壁に当たった瞬間、彼女の個性が染み込む。
「――動いて」
壁の一部が崩れた。
しかし、ただ崩れたのではない。
飛び散った瓦礫が、彼女の意思に従って死柄木へ殺到する。