第12章 編め、必殺技!
彼女の拳銃の噂は、思いのほか早く広まっていた。
仮免許取得に向けた必殺技の開発期間。サポート科の研究ラボには、A組だけでなくB組の生徒たちも頻繁に出入りしている。誰がどんな装備を開発しているのか、情報が飛び交うのは時間の問題だった。
そして、面白そうな噂を聞きつけた人間が、黙っていられるはずもなかった。
「――聞いたかい? A組のあの女、生徒のくせに拳銃を持ち歩いているらしいじゃないか!」
雄英高校1年B組、物間寧人。
彼は教室の扉を勢いよく開け放つと、いつもの調子でA組への宣戦布告を始めた。
「いやあ、さすがA組! ヴィランに襲撃され、体育祭で目立ち、今度は銃まで持ち出す! 君たちは一体、どこまで学校生活を逸脱すれば気が済むんだい?」
「うるせえ。帰れ」
爆豪が即答した。
「おやおや、怖い怖い! 相変わらず品性のかけらもないね、爆豪くん!」
「ぶっ殺すぞ、テメェ」
「ほら! これだよ! これがA組の教育水準さ!」
「物間、廊下でやれ」
瀬呂が机に突っ伏したまま言った。
「ここ教室だから。あと、声でかい」
「君たちは本当に危機感というものがないね! 僕は善意で忠告しに来てあげたというのに!」
「善意の人はそんな顔で来ないと思うよ」
緑谷がぼそりと呟いた。
しかし、物間は聞こえなかったらしい。
彼の視線は教室の奥へと向いていた。
窓際の席。
そこでは、彼らの騒ぎなどまるで存在しないかのように、彼女が静かに本を読んでいた。
長い髪を肩に流し、頬杖をつきながらページをめくる姿は、教室の喧騒から切り離された別世界の住人のようだった。
物間は口元を吊り上げる。
「おや。噂のご本人がいらっしゃるじゃないか」
彼は迷いなく彼女の席へと歩いていった。
周囲のA組生徒たちは、嫌な予感を覚えた。
特に爆豪は、物間が彼女の机の前で立ち止まった瞬間、露骨に眉間のしわを深くした。
「君、ちょっといいかな?」
「……何かしら」
彼女は本から目を離さない。
「君の持っている拳銃について、聞きたいことがあってね」
「そう」
「そう、じゃないだろう! 銃刀法違反という言葉を知っているかい? 高校生が持ち歩く武器としては、あまりにも危険すぎるんじゃないのか?」
彼女はページをめくった。