第12章 編め、必殺技!
彼は羽根を彼女に差し出す。
「落ちてたぞ」
「……」
受け取ろうと伸ばした指先が、ほんの一瞬だけ触れ合った。
爆豪はすぐに手を引いた。
「……変なことに巻き込まれてんなら、さっさと言えよ」
「え?」
「お前、何考えてんのか分かんねぇし、何隠してんのかも知らねぇ。けど……」
そこで言葉を切り、彼は苛立たしげに舌打ちした。
「……面倒なことになってからじゃ遅ぇだろうが」
ぶっきらぼうな言葉。
それでも、その奥にあるものを、彼女は感じ取ってしまった。
心配してくれているのだ。
自分の知らないところで、彼女が危険にさらされているのではないかと。
「……ありがとう、爆豪くん。でも、大丈夫よ」
彼女は、いつもの微笑みを浮かべた。
「心配しないで」
爆豪は、その笑顔を見つめた。
綺麗な笑顔だった。
けれど、今夜の彼には、その笑顔がひどく遠いものに感じられた。
彼女は何かを隠している。
それも、自分たちには簡単に踏み込めない何かを。
そして、その秘密に関わっているらしい男が、夜中に彼女の部屋を訪れていた。
「……チッ。好きにしろ」
そう言い残し、自室へと歩いていく。
彼女は、その背中を見送った。
手の中には、一枚の赤い羽根。
首筋には、まだ消えない熱が残っている。
「……本当に、何してくれてるのよ」
今度こそ誰にも聞こえない声で呟き、彼女はそっと扉を閉めた。
一方、廊下を歩く爆豪は、先ほどの光景を頭の中で繰り返していた。
赤い羽根。
男の声。
赤く染まった首筋。
そして、あの女が見せた、一瞬の動揺。
胸の奥に、正体の分からない苛立ちが広がっていく。
「……あの羽根」
まだ確証はない。
それでも、もし本当にホークスが彼女の部屋にいたのだとしたら。
そして、あの首筋の赤みが、あの男の仕業だったとしたら。
爆豪は、無意識に拳を握りしめていた。
「……なんなんだよ」