第12章 編め、必殺技!
まずい。
ここは雄英高校の寮だ。
公安の関係者が訪ねてくること自体が問題なのに、ましてやプロヒーローのホークスが夜中に窓から現れるなど、説明のしようがない。
誰かに見られたら終わりだ。
「ちょ、ちょっと待っ――」
彼が言い終わる前に、彼女は胸ぐらをつかんだ。
「中に入って!」
「えっ、わっ――」
そのまま室内へ引きずり込み、勢いよく窓を閉める。
ホークスは床に足をつけると、つかまれた襟元を見下ろし、それから彼女へ視線を戻した。
「……大胆だねぇ」
「黙りなさい」
「いやぁ、まさか君のほうから部屋に招き入れてくれるとは」
「招いてない!事故よ、事故!」
彼女は頭を抱えたくなった。
この男は、どうしてこうも人の神経を逆撫でするのが上手いのだろう。
「今度は何しに来たの?」
声を潜めながらも、彼女の目は鋭かった。
「今は任務中なの。見れば分かるでしょう?
雄英の寮にプロヒーローが何の前触れもなく来る場所じゃないわ」
「うん。分かってる」
「分かっていて来たの?」
「もちろん」
悪びれる様子は一切ない。
彼女は深く息を吸い込んだ。
「……帰って」
「その前に、聞きたいことがあるんだよね」
「聞きたくないわ」
「まだ何も言ってないけど?」
「あなたの顔を見た時点で、ろくでもないことだってことくらい分かるもの」
「ひどいなぁ」
ホークスは笑った。
けれど、その笑顔の奥にある眼差しは、いつもより真剣だった。
「この前の返事、聞きに来たんだ」
彼女の表情が、わずかに固まる。
病院の屋上。
夜風の吹く中、彼が自分に告げた言葉。
――好きなんだ。
あのときの声も、目も、彼女は覚えていた。
そして、返事を保留にしたままだったことも。