第12章 編め、必殺技!
翌日も過酷な訓練を終え、寮に戻った頃には、すっかり夜も更けていた。
必殺技の開発は、想像していた以上に神経を使うものだった。
今日だけで、個性の新たな可能性をいくつも試した。身体の疲労もさることながら、慣れない高校生活で気を張り続けているせいか、精神的な疲れも蓄積している。
部屋に戻ったおもちは、シャワーを浴び、濡れた髪をタオルで拭いた。
それから、窓際に置いてある灰皿を手に取り、ベランダへと出る。
夜風が、火照った肌を撫でた。
彼女は一本の煙草を取り出し、火をつける。
ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出した。
「……はぁ」
思わず、安堵の息が漏れる。
落ち着く。
そう思ってしまうほど、煙草を吸う本数は増えていた。
以前は、任務の合間や気持ちを切り替えたいときに吸う程度だった。けれど、雄英に潜入してからは違う。
朝から晩まで、年相応の生徒として振る舞う。クラスメイトたちと笑い、授業を受け、訓練に参加し、時には恋愛話にまで付き合う。
彼らにとっては、かけがえのない青春なのだろう。
だが、彼女にとっては任務の一環だった。
同年代の少女たちと過ごす時間を楽しめないわけではない。むしろ、彼女たちの無邪気さに救われることもある。
それでも、ふとした瞬間に思い知らされる。
自分は彼女たちと同じ場所には立っていないのだと。
守るべき秘密がある。明かせない過去がある。何より、自分がここにいる本当の理由を、誰にも話すことができない。
「……いつまで続くのかしらね」
独り言は、夜風に溶けていった。
乾ききっていない髪から水滴が落ち、首筋を伝う。薄手の部屋着に張り付く濡れた髪を指先で払い、彼女は再び煙草を口元へ運んだ。
そのときだった。
「やぁ、こんばんは」
頭上から、聞き覚えのある声が降ってきた。
「…………」
一瞬、思考が止まった。
ゆっくりと顔を上げる。
赤い翼。
軽薄そうな笑み。
そして、こちらの都合など一切考えていない、見慣れた男の顔。
「……ホークス」
「久しぶり、ってほどでもないか」
彼はベランダの手すりの向こうに浮かび、片手をひらひらと振っていた。
まるで、近所に住む知人の家へ遊びに来たかのような気軽さだ。
「何してるの、あなた……!」
彼女は反射的に煙草を灰皿へ押しつけた。