第3章 USJ襲撃事件編
さっき、脳無を撃った女。
その銃弾を受けた脳無が、突然こちらのヴィランを襲い始めた。
――偶然ではない。
死柄木はそう理解し始めていた。
「お前……」
彼女は一歩、前へ出る。
「ゲームオーバーよ」
低い声だった。
その瞬間、空気が変わった。
殺気
それまで彼女が一度も見せなかった、明確な敵意。
緑谷が息を呑む。
(……怖い)
彼女の顔は、いつもと変わらない。
なのに、今だけは、誰も彼女に近づこうとは思えなかった。
死柄木でさえ、足を止める。
「……へぇ」
口元が歪む。
「お前、脳無を操った女か。どんな個性を使った?何者なんだ?」
彼女の銃口が、わずかに動く。
「私が何者かなんてどうでもいいでしょ?」
「なんで?」
「あなたが覚える必要ないから」
死柄木の指が動く。
しかし、相澤の抹消によって個性は封じられている。
「……チッ」
死柄木が舌打ちする。
その瞬間、彼女の脳裏にはいくつもの情報が走っていた。
死柄木弔、
個性――触れたものを崩壊させる。
黒霧、
空間移動。
脳無、
超高性能の肉体。
そして、相澤の個性が解除された瞬間、死柄木は再び危険になる。
だから今、この一瞬に逃がしてはいけない。
「先生」
彼女が小さく呼ぶ。
「分かってる」
相澤も死柄木から目を逸らさない。
「一瞬でも目を切らさない」
「ええ」
二人の視線が交わる。
言葉は、それだけで十分だった。
緑谷は二人を見つめる。
これまでずっと、彼女は戦場を見ていた。
敵を分析し、味方を誘導し、危険を避けていた。
けれど今は違う。
自分自身が、戦場の中心に立っている。
「……みんな、下がって」
彼女が言う。
「ここから先は――」
銃口が死柄木を捉える。
「私たちが相手をする」
その声を聞いた死柄木が、初めて笑った。
「……あぁ、ムカつくなぁ!!」
そして、黒霧の霧が、再び周囲に広がり始めた。
彼女の目が鋭くなる。
「――来る!」
相澤の目が、再び赤く光った。
そして二人は。
一歩も退かなかった。