第12章 編め、必殺技!
「……一度だけ、ね」
観念したように答える。
その瞬間。
「「「えええええっ!?」」」
女子たちの声が、ロビーいっぱいに響き渡った。
「一度だけ!? 誰!? 誰なの!?」
「いつ!? どこで!? どんな人!?」
「おもちちゃんに告白するなんて、相当勇気がある方ですわね……!」
「待って待って! それ、今も連絡取ってたりする!?」
矢継ぎ早に飛んでくる質問に、彼女は思わず笑ってしまった。
(……なるほど。こちらも、なかなか大変ね)
先ほどまで麗日を追い詰めていた芦戸の勢いが、今度は自分に向けられている。
これは、迂闊に答えると逃げられなくなる。
「さぁ、どうかしら?」
彼女はカップを持ち上げ、優雅に微笑んだ。
「そうやって話を逸らすの、ずるい!」
芦戸が即座に反応する。
「じゃあ、せめて相手の名前だけでも!」
「……秘密」
彼女は人差し指を唇に添えた。
その仕草に、女子たちは一斉に悲鳴を上げた。
「きゃーっ! 何それ、気になるー!!」
「絶対、普通の人じゃないよね!?」
「おもちちゃん、そういうところあるんだ……!」
彼女は楽しそうに笑っていた。
けれど、胸の奥では、病院の屋上で向けられた真剣な眼差しが、静かに蘇っていた。
ホークスの告白に、彼女はまだ明確な答えを出していない。
そして、そのことを知っているのは、彼と彼女だけだった。
少なくとも、今のところは。
「……ねえ、おもち」
芦戸が、ふと声の調子を変えた。
「その人のこと、好きだったの?」
彼女は一瞬だけ、目を伏せた。