第12章 編め、必殺技!
公安で培った観察眼とは似ているようで、まるで違う。
任務では、相手の言葉の裏にある意図を読み、情報を集め、必要ならば嘘を見抜く。
けれど、今、彼女たちがしているのは、誰かの秘密を暴くためではない。
ただ、好きな人がいるかもしれないという話題だけで、無邪気に笑い合っているのだ。
(……平和ね)
彼女は口元を緩めた。
こういう時間も、悪くない。
むしろ、自分には少し縁遠かったものかもしれない。
長い間、任務や訓練を優先してきた。誰かに恋をしているかと尋ねられても、そんなことを考える余裕などなかった。
いや、正確には。
考えないようにしていたのかもしれない。
「で、麗日! 本当のところはどうなの?」
「……もう知らん!」
麗日がぷいっと顔を背けると、女子たちの笑い声が弾けた。
彼女はそのやり取りを、どこか新鮮な気持ちで眺めていた。
自分とは違う世界に生きているように見えたクラスメイトたち。
けれど、こうしていると、彼女たちも普通の女の子なのだと実感する。
好きな人のことで悩み、友達にからかわれ、顔を赤くする。
そんな当たり前の日常が、彼女には少し眩しかった。
……と。
「そうだ!」
突然、芦戸がこちらを振り向いた。
「おもちはどうなの!?」
「……私?」
予想していなかった話題に、彼女はカップを持つ手を止めた。
「そうそう! 今まで何回告白されたことある?」
「えっ、確かに気になる!」
耳郎も興味津々といった様子で身を乗り出す。
「おもちちゃん、すごく綺麗だもんね。いっぱい告白されてそう!」
「落ち着いた雰囲気もありますし、男性からの人気も高そうですわ」
八百万まで、真面目な顔で頷いた。
「ちょ、ちょっと待って……! なんで私まで!?」
今度は麗日が、助かったとばかりに話題に便乗する。
「だって、みんな気になるじゃん!」