第12章 編め、必殺技!
轟は腕を組み、静かに考え込む。
「個性が使えない状況を想定しているんじゃないか。今日、自分の身体に負担がかかっていることも分かっていたみたいだし」
「だからって、普通は銃なんか持ち歩かねぇだろ」
「普通ならな」
轟の言葉に、爆豪は黙り込んだ。
そう。
普通なら、持ち歩かない。
雄英の生徒が、制服の下に拳銃を隠し持つ理由などない。
けれど、彼女は持っていた。
しかも、長年使い込んでいるような手慣れた様子で。
爆豪は、先ほど彼女が立っていた場所を思い出す。
岩壁の下敷きになりかけた瞬間、彼女は逃げようともしなかった。
あれは、自分の個性を信じていたからなのか。
それとも――。
「……あいつ、何者なんだよ」
普段なら、直接本人に問いただしていただろう。
だが、今回は違った。
問い詰めたところで、彼女が本当のことを話すとは思えなかった。
あの涼しげな笑顔。
何を聞いても、核心だけはするりとかわしてしまいそうな、あの目。
「爆豪」
轟に呼ばれ、爆豪は視線を向ける。
「今のこと、本人に聞くか?」
「……いや」
爆豪は舌打ちした。
「聞いたところで、まともに答えるわけねぇだろ」
二人の間に、短い沈黙が落ちた。
やがて爆豪は、彼女が消えていった廊下の先へと歩き出す。
「おい、どこへ行くんだ?」
「帰るんだよ!」
吐き捨てる声は、いつもどおり荒々しい。
けれど、その頭の中では、ひとつの疑念が消えずに残っていた。
彼女は、自分たちが知らない何かを抱えている。