第12章 編め、必殺技!
彼女にとって、武器を携行することは特別な行為ではない。
それは、個性を使えなくなったときにも生き残るための備えであり、任務を遂行するために身につけた習慣でもあった。
「分かった。こちらで預かろう。点検も含めて、きちんと見ておく」
「ありがとうございます」
「3日後、取りにおいで」
「はい。よろしくお願いします」
彼女は二丁の拳銃を預けると、丁寧に頭を下げた。
「それでは、失礼します」
軽やかな足取りでラボを出ていく。
扉が閉まる直前、彼女の横顔に廊下の明かりが差し込んだ。
そして、彼女の姿が見えなくなった頃。
「……おい」
ラボから少し離れた廊下の角で、爆豪が低い声を漏らした。
隣には轟が立っている。
二人は、たまたま訓練後に用事があって校舎に残っていた。帰ろうとしたところ、見覚えのある後ろ姿がラボから出てくるのを目撃したのだ。
「今の、あいつだよな」
轟が確認するように言った。
「ああ」
爆豪は、彼女が去っていった方向を見つめていた。
先ほど、ラボの扉が開いた一瞬。
見間違いでなければ、彼女はスカートの内側から何かを取り出していた。
そして、パワーローダーに手渡したもの。
あの形状を見誤るほど、爆豪の目は節穴ではない。
「……拳銃、か?」
轟の声にも、わずかな緊張が混じっていた。
爆豪は眉間に皺を寄せる。
USJ襲撃事件。
あのとき、彼女が何をしていたのか。
自分たちが知らないところで、どんな判断を下し、どんな行動を取っていたのか。
断片的な疑問が、ひとつにつながり始める。
今日の訓練でもそうだった。
あれほどの岩壁が直撃したのに、彼女は傷ひとつ負わなかった。
個性の新しい使い方を、まるで当然のように披露した。
それなのに、わざわざ銃を手入れに出す必要があるのか。
「……どういうことだ」
爆豪が吐き捨てるようにつぶやいた。