第12章 編め、必殺技!
訓練が終わる頃には、すっかり日が落ちていた。
生徒たちが寮へ戻っていく中、彼女は一人、校舎内を歩いていた。制服に着替え、乱れた髪を整えた姿は、昼間の訓練で岩壁の直撃を受けた人物とは思えないほど、いつもどおりだった。
向かっているのは、サポートアイテムの開発ラボ。
個性が戻り、不可侵領域も新たな段階へと進化した。だが、先ほどの消耗を考えれば、まだ完全に身体になじんだとは言い難い。
もし今、個性を十分に発揮できない状況に陥ったら。
万が一に備えておくのは、公安で身につけた習慣だった。
(使わずに済むなら、それが一番だけれど)
彼女はラボの扉を開いた。
「失礼します」
「おや? こんな時間に珍しいな」
作業台に向かっていたパワーローダーが、顔を上げる。
「少しお願いしたいことがあって」
「ほう? 何かな?」
彼女は周囲を一度確認してから、スカートの裾に手を伸ばした。
ガーターベルトに固定されたホルスター。
そこから、二丁の拳銃を取り出す。
金属がかすかに触れ合う音が、静かなラボに響いた。
パワーローダーの視線が、彼女の手元へと落ちる。
「……なるほど。そいつか」
「ええ。久しぶりに手入れをしておこうと思って」
彼女が差し出したのは、長年愛用してきた二丁の拳銃だった。
USJ襲撃事件の際にも使用したものだ。
雄英の生徒が普段の訓練で扱うような代物ではない。洗練された外観の奥に、実戦で使い込まれた武器特有の雰囲気がある。
ホルスターからのぞくその姿だけでも、彼女が歩んできた道のりが、普通の高校生とはまるで異なることを物語っていた。
「調子が悪いのか?」
「いいえ。念のためです。今は個性を身体になじませている途中なので、万が一の事態に備えておきたくて」
「そうか……」
パワーローダーは、彼女の顔を見た。
その表情に浮かぶのは、単なる心配ではない。彼女の素性も、これまでの経緯も知っているからこその、複雑な理解だった。