第12章 編め、必殺技!
いつから見ていたのだろう。
眠たげな目つきはいつもと変わらない。しかし、その視線は彼女の顔色から足取りまで、正確に捉えていた。
「……先生?」
「隅で休んでろ」
あまりにも端的な指示だった。
「ですが、まだ訓練の途中ですし――」
「途中だから言ってんだ」
相澤は彼女の言葉を遮った。
「さっきまでと歩き方が違う。重心が安定してねぇし、呼吸も少し乱れてる。顔には出してねぇつもりだろうが、誤魔化せてねぇぞ」
彼女は一瞬、言葉に詰まった。
(……さすがね)
生徒たちの個性の開発を見守りながら、彼女のわずかな変化まで見逃していない。
相澤の観察眼は、やはり侮れなかった。
「大丈夫です。少し、感覚にずれがあるだけなので」
「大丈夫かどうかを判断するのは、お前じゃねぇ」
相澤は淡々と言い放つ。
「新しい技を開発した直後に、限界まで個性を使うな。ましてや、お前の個性は制御を誤ったときの影響が読みにくい。自覚があるなら、なおさらだ」
彼女は、思わず目を細めた。
新しい技の完成度だけでなく、その危険性まで見抜かれている。
「……分かりました」
素直に返事をすると、相澤はわずかに目を細めた。
「本当に分かってんのか?」
「ええ。今後は出力と持続時間を調整します。身体の感覚と個性の同期も、確認する必要がありそうです」
「そういう話をしてるんじゃねぇんだが……」
相澤は小さく息を吐いた。
「とにかく休め。立ってるのがきつくなったら、すぐに言え」
「はい」
彼女は今度こそ、訓練場の隅に置かれたベンチへ向かった。
腰を下ろした瞬間、身体の奥に残っていた疲労が、じわりと表面に浮かび上がってくる。
(……思ったより、消耗していたのね)
背もたれに身体を預け、目を閉じる。
ほんの数分、休めば十分だろう。
そう判断した彼女の前を、爆豪が通りかかった。
「おい」
目を開けると、彼は不機嫌そうな顔で立っていた。
「何?」
「……さっきからフラフラしてんじゃねぇか」
「あら。見ていたの?」
「見えるところで倒れられたら迷惑なんだよ!」
いつもの調子だった。