第12章 編め、必殺技!
訓練場には、再び爆発音や生徒たちの掛け声が響き始めていた。
彼女もまた、何事もなかったかのように歩き出す。
けれど、数歩進んだところで、わずかに眉を寄せた。
足元の感覚が、妙に頼りない。
地面を踏みしめているはずなのに、身体がふわふわと浮いているようだった。視界が揺れるほどではない。意識も明瞭だ。ただ、全身に満ちていた力が、急速に抜けていくのを感じた。
彼女は誰にも気づかれないよう、そっと息を吐く。
先ほどまで展開していた不可侵領域を、完全に解除した。
途端に、身体が重くなる。
(……少し、使いすぎたわね)
個性が戻ったことで、出力そのものは十分に確保できていた。むしろ、以前よりも遥かに強い。問題は、その力を扱う自分の身体が、まだ出力に適応しきれていないことだった。
不可侵領域を自分自身にまで拡張する。
それは、単純に防御範囲を広げるような話ではない。自分の存在そのものを個性の支配下に置き、外部からの干渉を拒絶する。肉体と個性の境界を限りなく曖昧にするような、繊細な制御が必要だった。
その状態を維持するために、無意識のうちに力を使い続けていたのだろう。
(出力を抑えるだけでは、根本的な解決にならない……)
彼女は頭の中で、先ほどの感覚を整理する。
個性の展開自体は成功した。岩壁の直撃を受けても、身体には一切の損傷がなかった。
しかし、解除した直後に現れた浮遊感。
これは、個性の出力と身体の感覚にずれが生じている可能性がある。
(もう少し、自分自身の身体を最適化する必要があるわね。個性を使うための身体じゃなくて、個性が自然になじむ身体に……)
改善点が見えたことに、彼女は内心で満足した。
必殺技は完成した。
実戦で自在に使いこなすには、まだ調整が必要だ。
そんなことを考えながら、何食わぬ顔で訓練場の端へ移動しようとした、そのときだった。
「おい」
低い声が飛んできた。
彼女が顔を上げると、少し離れた場所に相澤が立っていた。