第12章 編め、必殺技!
自分が岩壁の下敷きになった瞬間、彼がどんな顔をしていたのか。
彼女は、それを見てしまった。
あれほど必死な表情を、彼女は初めて見たのだった。
「……爆豪くん」
「なんだ」
「心配してくれたの?」
「ぶっ殺すぞ!!」
即座に返ってきた怒声に、周囲からようやく安堵の笑いが漏れた。
彼女は目を細める。
「ふふ。ありがとう」
「調子に乗るなよ!!」
爆豪は吐き捨てるように言うと、乱暴に背を向けた。
けれど、その耳がわずかに赤くなっていたことに、彼女は気づいていた。
そして、誰にも悟られないよう、そっと視線を伏せる。
必殺技の開発は、成功した。
自分の個性は、またひとつ進化した。
けれど、それ以上に――。
(……なるほど)
彼女は、爆豪の背中を見つめながら考えた。
(この人は、仲間が傷つくことを、あんなにも嫌うのね)
公安として培ってきた観察眼は、戦闘能力だけでなく、人の本質を見抜くためにも使われる。
だからこそ、彼女はその一瞬を見逃さなかった。
怒りの奥にあった、焦り。
そして、彼女が無事だと分かったときの、確かな安堵。
それは、任務のために人を観察してきた彼女にとって、少しだけ新鮮なものだった。
一方、爆豪は訓練に戻りながらも、何度も彼女の姿を視界の端で追っていた。
岩壁が直撃した瞬間の光景が、頭から離れない。
無傷だった。
爆豪は拳を握りしめる。
彼女は、まだ何かを隠している。
そんな確信めいた予感があった。
彼女の必殺技は、完成した。
しかし、本当の狙いは、まだ誰にも知られていなかった。