第12章 編め、必殺技!
空気の揺らぎも、目に見える防御壁もない。
個性を使っているという気配さえ、微塵も感じられなかった。
しかし、その瞬間にも、彼女の個性は進化を続けていた。
これまでの『不可侵領域』は、自分の周囲に領域を展開し、外部からの干渉を遮断するものだった。
ならば、その先はどうか。
領域を自分の周囲に作るのではなく、自分自身を領域そのものにする。
攻撃を防ぐのではない。
攻撃が、自分に干渉することを許さない。
それが、彼女の導き出した答えだった。
(これなら……)
彼女の唇に、ごくわずかな笑みが浮かぶ。
必殺技は、もう完成していた。
そのときだった。
「おい、そっち危ねぇぞ!」
爆豪の爆破によって大きく崩れた岩壁。その一部が、予想外の角度で外れた。
重い岩の塊が、轟音を立てて落下する。
そして、その真下には――彼女がいた。
「――っ!」
岩の動きに気づいた爆豪の表情が、一瞬で変わった。
「よけろ!!」
訓練場に響き渡る、切迫した叫び声。
彼女は、その声に反応して振り向いた。
頭上から迫る巨大な岩壁。
逃げるには、あまりにも遅い。
「危ない!!」
誰かの悲鳴が上がった。
緑谷が駆け出そうとする。轟が個性を発動しかけ、切島が目を見開く。
そして爆豪は、間に合わないと悟った。
次の瞬間。
轟音とともに、岩壁が彼女を直撃した。
もうもうと土煙が舞い上がり、地面が震える。
「……おい」
爆豪の声が、かすれた。
先ほどまで彼女が立っていた場所は、崩れた岩に覆い尽くされていた。
「嘘、だろ……?」
上鳴の顔から血の気が引く。
「おい! 返事しろ!!」
爆豪が駆け出そうとした、そのとき。
「かっちゃん、待って!」
緑谷の声も、彼には届いていなかった。