第12章 編め、必殺技!
ヒーロー仮免試験に向けて、必殺技の開発が始まった。
訓練場に集まったA組の生徒たちは、それぞれが自分の個性と向き合い、新たな技を模索していた。
おもちもまた、身体の奥底から湧き上がる力を感じていた。
封じられていた個性が戻り、全身に力が満ちている。
以前とは比べものにならないほど、個性との一体感が増していた。
けれど、彼女の意識は訓練そのものには向いていなかった。
(内通者のあぶり出し……)
クラスメイトの中に、敵へ情報を流している者がいる。
それが事実ならば、自分の個性を不用意にさらすことは避けるべきだろう。特に、個性の本質や限界を知られることは、今後の任務において致命的な弱点になりかねない。
普通なら、力を隠す。
必要最低限の技だけを披露し、手の内を明かさないようにする。
しかし、彼女はその逆を選んだ。
(隠せば、相手も警戒する。ならば、すべてを見せたと思わせればいい)
彼女は、個性を全て解放することにした。
ただし、それを誰にも悟らせないまま。
訓練場の中央では、爆豪が轟音とともに岩壁を爆破していた。
「チッ……! まだ足りねぇ!」
爆発の勢いで砕けた岩が、辺りに飛び散る。
その傍らを、彼女は何事もないように歩いていた。
急ぐでもなく、立ち止まるでもなく。
ただ、いつもと同じ涼しげな顔で、訓練場を見て回っている。
「……何してんだ、あいつ」
爆豪は一瞬だけ彼女に目を向けたものの、すぐに視線を戻した。
少し離れた場所では、緑谷がノートを片手に仲間たちの技を観察している。切島や上鳴も、自分たちの必殺技を形にしようと試行錯誤を繰り返していた。
誰も気づいていない。
彼女が何をしているのか。