第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
梅雨が抱えていたもの。
それは、きっと彼女だけのものではなかった。
緑谷たちの行動を知った時、クラスのみんながそれぞれに不安や怒りを抱えていた。
心配した者。
怒った者。
何も言えずにいた者。
そして、それぞれが自分なりに、この出来事と向き合おうとしていた。
「……ごめん」
最初に頭を下げたのは緑谷だった。
「梅雨ちゃん、本当にごめん」
飯田も続く。
「我々は、自分たちの行動が皆にどれだけ心配をかけるのか、十分に考えられていなかった」
「俺も……悪かった」
切島が拳を握る。
「自分が正しいと思ってたけど、それだけじゃ駄目だった」
八百万も涙を浮かべながら頭を下げた。
「私たちの行動には、責任が伴うのだと……改めて思い知らされました」
そして、五人は梅雨のもとへ駆け寄った。
「ごめんね」
「本当に、ごめんなさい」
梅雨は泣きながら、何度も頷いた。
やがて、少しずつ空気が変わっていく。
完全に元通りになるわけではない。
けれど――。
また一緒にヒーローを目指す。
同じ教室で学び、競い合い、支え合う。
そのために、ここからもう一度始める。
緑谷は涙を拭った。
そして夜空を見上げる。
彼女は、その様子をベランダからそっと見守っていた。
「……不思議」
と小さく呟く。
彼らは、ただのクラスメイト。
そう思っていた。
けれど、間違った時には、真正面からぶつかる。
傷つけてしまった相手には、きちんと謝る。
そして、もう一度同じ場所を目指す。
そんな関係を、彼女は今まで知らなかった。
「……これが、仲間っていうのかな」
煙草の火を灰皿に押し付けながら、自分の中に浮かんだ気持ちに蓋をする。
部屋の中には、もちもちのぬいぐるみと、好きな香り。
いつもの自分の世界。
けれど今夜だけは、その静かな部屋が少し違って感じられた。
彼女はもう一度、外を見る。
まだ寮裏には、クラスメイトたちの姿があった。
彼女はほんの少しだけ、口元を緩めた。
――このクラスに来て、よかったのかもしれない。
そんなことを、初めて思った。