第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
部屋に戻った彼女は、改めて室内を見渡した。
白を基調とした壁と家具。
そこに淡いピンクの小物がいくつか置かれている。
清潔感があって、整っている。
――けれど。
「……なんか落ち着かない」
用意された部屋は、彼女の好みを考えれば少しばかり整いすぎていた。
まるでモデルルームのような、生活感のない空間。
彼女は鞄を開けると、自分で持ってきたものを少しずつ取り出していった。
まずは、もちもちしたぬいぐるみ。
ベッドの上にちょこんと置く。
次に、柔らかなクッション。
ベッドの隅に並べる。
そして、小さな香水瓶。
蓋を開け、ほんの少しだけ香りを纏わせてから、机の上へ置いた。
「……うん」
それだけで、部屋の雰囲気が変わった。
白とピンクだけだった無機質な空間に、彼女自身の生活が入り込む。
ぬいぐるみ。
柔らかなクッション。
好きな香り。
さっきまでの居心地の悪さが、嘘のようになくなった。
「はぁ、落ち着く…」
彼女は満足そうに微笑む。
そして最後に、机の引き出しを開けた。
中には、タバコとライター。
それを奥へしまい、引き出しを閉める。
「……これでよし」
彼女はベッドへ腰を下ろした。
ふわりとクッションが沈む。
ぬいぐるみを抱き寄せる。
好きな香りが、ほんのりと漂っている。
外から聞こえてくるクラスメイトたちの騒がしい声を聞きながら、彼女は小さく息を吐いた。
「……ふふ案外、悪くないかも」
新しい生活。
新しい部屋。
そして、新しい仲間たち。
その裏側で、自分が抱えている任務のことを思えば――。
せめて、この部屋くらいは。
自分が安心できる場所にしておきたかった。