第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
「……え?」
切島が慌てて受け取る。
手の中にあったのは、札束だった。
「……ええっ!?ご、五万円!?」
目を丸くする切島に、爆豪は不機嫌そうに言い放つ。
「受け取れ」
「いやいやいや!待て待て!何でいきなり五万!?」
切島は札束と爆豪の顔を交互に見た。
「え、カツアゲ!?」
「誰がするか、ボケ!」
即座に怒鳴られ、切島がびくりと肩を跳ねさせる。
「これは、お前が俺を助けるために使った金だ」
「……は?」
「暗視鏡。買ったんだろ」
その言葉に、切島の表情が変わった。
爆豪を救出するために、切島が購入した暗視鏡。
あのときは、金額など気にしている余裕はなかった。仲間を助けるために必要だと思ったから、迷わず購入したのだ。
「誰から聞いたの?」
切島が尋ねると、爆豪は舌打ちした。
「んなこと、どうでもいいだろ」
実際、爆豪は仲間からその話を聞いたあと、自分の預金から金を下ろしていた。
切島が自分を助けるために金を使った。
その事実を知って、何も返さないままでいるのが、どうにも気に入らなかったのだ。
「……でもよ、俺が勝手にやったことだし。お前を助けるためだったんだから、別に――」
「うるせぇ」
爆豪が切島の言葉を遮る。
「いつまでもしみったれた顔されると迷惑なんだよ」
「……!」
「借りは返した。それで終わりだ。いつまでもウジウジしてんじゃねぇ」
ぶっきらぼうな言葉。
けれど、その意味を理解した切島は、手の中の札束を見つめたまま、しばらく動かなかった。
爆豪は、礼を言わなかった。
あのとき助けに来てくれたことへの感謝も、自分を救うために危険を冒したことへの申し訳なさも、口にはしなかった。
代わりに、使った金を返した。
それが、爆豪勝己なりの感謝の伝え方だった。
「……お前、マジで……」
切島の顔が、ぱっと明るくなった。
「サンキューな、爆豪!!」
「うるせぇ!」
「よっしゃああああ!!」
切島は札束を高く掲げた。
「今日は焼肉だああああ!!」