第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
任務のために築いた関係。
最初は、情報を得るために必要な距離を測り、相手の性格を把握し、警戒心を解くために言葉を選んでいた。
それが今では、こうして自分の帰りを喜んでくれる人たちがいる。
彼らの笑顔を見ていると、ほんの一瞬だけ、任務のことも、個性のことも、すべて忘れてしまいそうになった。
――いけない。
心の中で、そっと自分を戒める。
自分は、彼らに伝えていないことがある。
この場所にいる理由も、彼らの知らない過去も。
それでも、
「……ただいま」
小さく呟いたその言葉は、賑やかな声にかき消されそうなほどだった。
けれど、彼女自身には、確かに聞こえていた。
ここが、自分の帰ってきた場所なのだと。
そして、その様子を少し離れた場所から見ていた爆豪は、黙ったまま拳を握りしめていた。
彼女が笑っている。
こうして、再び自分たちの前に立っている。
それだけで、胸の奥に張りついていた重苦しいものが、わずかにほどけていく気がした。
だが、同時に思い知らされてもいた。
あの日、自分は彼女を助けられなかった。
彼女がどんな目に遭ったのか、何を乗り越えてここへ戻ってきたのか。そのすべてを知っているわけではない。
それでも、もう二度と、あんな思いはしたくなかった。
「……チッ」
小さく舌打ちをして、爆豪は視線を逸らした。
そのとき、ふと彼女がこちらを向いた。
目が合う。
彼女は一瞬だけ驚いたように瞬きをすると、爆豪に向かって、いつものように柔らかく微笑んだ。
「爆豪くんも、久しぶり」
たったそれだけ。
それだけなのに、爆豪は返事をするまでに、ほんのわずかな間を置いてしまった。
「……おう」
ぶっきらぼうな返事。
けれど、彼女は気にした様子もなく、再びクラスメイトたちの輪へと戻っていった。
その背中を、爆豪はしばらく目で追っていた。
もう、手の届かないところへ行かせたくない。
そんな思いが胸の奥で静かに膨らんでいることを、彼自身もまだ、うまく言葉にはできなかった。