第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
「あなたたちが、あの状況でどれだけ頑張っていたのか、私は知らないわけじゃないもの」
緑谷が顔を上げる。
「それにね」
彼女は自分の胸元に軽く手を添えた。
「結果的に、私の個性も戻ってきたでしょう?」
あの日、オール・フォー・ワンに奪われかけた力。
その奥底に眠っていた、本当の個性。
今では、かつてとは比べものにならないほどの力が、自分の中を巡っている。
もちろん、それを得るために経験したことを、簡単に肯定できるわけではない。
けれど、あの出来事をただの不幸で終わらせるつもりもなかった。
「だから、私は大丈夫。それより……」
彼女は顔を上げ、周囲に集まってきたクラスメイトたちを見渡した。
いつの間にか、緑谷だけでなく、ほかの生徒たちも彼女を取り囲むように集まっていた。
芦戸は今にも泣き出しそうな顔をしているし、麗日は胸の前で両手を握りしめている。飯田は何か言いたそうに眼鏡を押し上げ、切島は安堵したように大きく息を吐いた。
爆豪は少し離れた場所に立ち、黙って彼女を見ていた。
その視線に気づきながらも、彼女は今は何も言わなかった。
ただ、目の前にいる仲間たちの顔を、一人ひとり確かめるように見つめる。
「こうして、またみんなに会えて嬉しい」
そう告げた彼女の笑顔は、いつもの余裕を含んだ微笑みとは少し違っていた。
どこかほっとしたような、心からの笑顔だった。
その表情を見た緑谷は、目を見開いた。
「……うん!」
ようやく、彼も笑った。
「おかえり、おもちさん!」
その言葉を合図にしたかのように、周囲からも声が上がる。
「おかえりー!もう、ほんっとに心配したんだから!」
芦戸が勢いよく彼女に抱きついた。
「芦戸さん、ちょっと……!」
「ちょっとじゃない!会いたかったんだから!」
「そうよ。メールだけじゃ、やっぱり心配だったもの」
麗日も目元を潤ませながら微笑む。
「無事で本当によかったです!」
飯田が背筋を伸ばし、力強く頷いた。
「我々も、君の復帰を心待ちにしていた!」
「お前、相変わらず堅ぇなあ、飯田!」
切島が笑いながら肩を叩く。
「うん。ありがとう、みんな」
彼女は芦戸の背中にそっと手を回した。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。