第11章 入れ寮 ハイツアライアンス
必要な荷物をまとめ、彼女は雄英高校の制服に袖を通した。
今日から、入寮。
ヴィランに誘拐され、病院で療養し、目まぐるしい日々の中で家庭訪問まで終えた。振り返れば、あの林間合宿から、まだそれほど時間は経っていないはずなのに、ずいぶん遠い出来事のように感じられた。
クラスメイトたちとは、メールで何度かやり取りをしていた。心配するメッセージを送ってくる者もいれば、いつもどおりの調子で他愛のない話を振ってくる者もいた。
そのたびに、彼女は笑みを浮かべながら返信していた。
けれど、実際に顔を合わせるのは、林間合宿以来だ。
「……よし」
小さく呟き、鞄を手に取る。
鏡に映る自分の姿を確認してから、玄関を出た。
いつもの通学路。
見慣れた景色。
何も変わっていないように見える日常が、今日は少しだけ違って感じられた。
胸の奥に、わずかな緊張がある。
そして、それとは別に、忘れてはならないものもあった。
――自分の任務。
雄英高校に潜入し、内通者を特定すること。
クラスメイトたちとの距離が近くなろうとも、自分の中にどれほど新しい感情が芽生えようとも、それだけは決して忘れてはならない。
彼女は一度、深く息を吸い込んだ。
「……大丈夫」
そうして、いつものように涼やかな表情を浮かべると、雄英高校へと足を進めた。