第10章 神野区の悪夢編
けれど、そこには彼女を排除しようとする意図などなかった。
相澤は、彼女を一人の生徒として見ている。
圧倒的な力を持つ存在である前に、雄英高校で学ぶ生徒の一人として。
「それに、お前が何もかも一人で背負う必要はない」
相澤は静かに続けた。
「危険があるからといって、最初から他人との関わりを断つな。そういうことをするために、俺たちがいるわけじゃない」
彼女は一瞬、目を見開いた。
それから、ゆっくりと視線を落とす。
自分の力が目覚めて以来、彼女は何度も考えていた。
この力をどう扱うべきなのか。
これまでどおりに振る舞っていいのか。
誰かのそばにいてもいいのか。
その答えを出せないまま、任務を続けることだけを決めた。
けれど、今ここで教師たちから告げられたのは、力の大きさだけで自分の居場所を決める必要はないということだった。
「……ありがとうございます」
小さく頭を下げる。
そのとき、ずっと彼女の様子を見守っていたオールマイトが、穏やかな声で口を開いた。
「おもち」
「はい」
「君が心配していることは、よく分かる。自分の力が大きくなったことで、周りの人々を傷つけてしまうのではないか。大切な仲間たちを、危険に巻き込んでしまうのではないか。そう考えるのは、君が周囲の人々を大切にしているからだろう」
彼女は何も答えなかった。
オールマイトは、そんな彼女に優しく微笑みかけた。
「だがね。力を持つということは、誰かと関わることを諦めなければならない、という意味ではないんだ」
その言葉に、彼女の指先がわずかに動いた。
「君の力がどれほど大きくなろうとも、君が君であることに変わりはない。君は、雄英高校の生徒だ。そして、君には一緒に学び、成長していく仲間たちがいる」
オールマイトは一度言葉を切り、まっすぐに彼女を見つめた。