第10章 神野区の悪夢編
「寮に入れば、私の近くにいるクラスメイトたちまで危険にさらすことになるかもしれない。
これまでも、私が原因で何かが起きる可能性はありました。
でも、今はその危険性が比べものにならないほど大きくなっている」
青い瞳が、二人を見据えた。
「私が寮に入ることで、みんなを守るどころか、危険に巻き込むことになったら……。それでも、私は寮に入っていいんですか?」
問いかけた声は、静かだった。
自分が恐ろしいわけではない。
自分の力が制御できないと考えているわけでもない。
ただ、自分の存在が、何も知らずに日常を過ごしていたクラスメイトたちにとって、新たな脅威になるのではないか。
そのことだけが、気にかかっていた。
相澤はすぐには答えなかった。
彼女の懸念は、決して的外れではない。
個性の全容が明らかになった以上、彼女がヴィランに狙われる可能性は格段に高まった。彼女を確保するために、周囲の人間を利用しようとする者が現れる可能性もある。
そして、彼女自身が圧倒的な力を持つ存在となった今、その力が何らかの事情で暴走したり、判断を誤ったりした場合の影響も、無視することはできなかった。
彼女を守るための寮生活が、彼女を中心とした新たな危険を生み出す。
そんな可能性を、教師として完全に否定することはできない。
「……リスクがあるのは事実だ」
相澤は率直に告げた。
「お前が狙われる可能性も、お前の存在が周囲に影響を及ぼす可能性も、ゼロじゃない。俺たちだって、すべての事態を想定できているわけじゃない」
彼女は黙って聞いていた。
「だが、それを理由にお前だけを別の場所に置けば、今度はお前自身の安全をどう確保するのかという問題が出てくる。
全寮制は、特定の生徒を隔離するためのものじゃない。
生徒全員を守るための措置だ」
「……はい」
「お前一人を危険因子として扱うつもりはない。
ただし、個性の管理や情報の取り扱いについては、これまで以上に慎重になる必要がある。それは理解しておけ」
厳しい言葉だった。